top of page
Image by Olga Tutunaru

SPECIAL

SPECIAL Interview

No Guarantee web magazine(2022.6)

Maria & 川畑梨瑚インタビュー vol.3

SPECIAL Interview

Maria & Kawahata

後楽園ホール還暦祭できっかけを掴む

実は、二人のシングル対決は2020年2月、WAVEのリングで実現していた。しかし、WAVEのエンタメ色の濃い試合で、『祝・成人の儀』とタイトリングされたていた。途中、宮崎有紀と広田さくらが乱入する展開。Mariaは「試合自体が特殊だったというか。ちゃんとシングルをした感が自分にはなかったので。そこまで、考えたことはなかったですね。」川畑「同期で同い年のMariaと闘えるの楽しみだなぐらいでした」と素っ気ない。その後、川畑がアクトレスガールズを退団し、マーベラスの道場で練習をする機会ができた。

 

Maria「あ、来たんだ。自分は人見知りなので、自分から声をかけることもなく。梨瑚が話してると、その輪に入るとか。練習は、人数が多い方が楽しいので。試合になったら、似てる部分があるからこそ負けたくないという気持ちはありますけど。自分は、オンオフの切替が激しいので。練習の面では、いつもと違うメンバーと練習ができるという嬉しさがありました」

 

川畑「匠さん、(桃野)美桜さんが主に指導してくださいました。その時は、そんなにMariaとは喋ってなかったですね。徐々に仲良くなっていった感じです。自分がマーベラスさんの興行に出る時に、セコンドとかの作業で、同い年だらか言いやすいのもありました」

 

時を経て2022年、後楽園ホールが60周年を迎え、主催興行を行うことになった。その女子プロレス・デーで、長与千種の推薦枠ができた。そこで、出されたカードが、Maria対川畑だった。

 

Maria「シングルマッチが第1試合だけだったので、チャンスだと思いましたね。タッグだと埋もれてしまう。自分を見せることができるし、二人の世界を見せることができきる。お客さんが、その日初めて見る第一試合の大事なところでシングルマッチをさせていただいて。すごい良い経験にもなりました。それで知ってくださったファンの方も最近いらっしゃって。還暦祭を見たという人が増えてきているので。印象に残れたんだと思います」。

 

川畑「あれだけの人数で先輩方がいて。第一試合って、メインと同じ、それ以上の時もあると自分は思っていて。そのスタートダッシュ。お客さんがプロレスを見にきていて、その日、初めて見るプロレスラーは自分たちだった。そういう意味で、振り返ると、相手がMariaでよかったなと思いますし、あれが同期でなかったら、ああいう試合はできていない。自分が先輩の立場だったら、自分が後輩の立場だったらどうだったのかなと思いますし。負けたくないというのが強かったからこその試合だったなと思います」

 

試合内容は、バチバチにぶつかり合い、意地を張り合いながら闘って、10分時間切れ引き分け。各団体が、それぞれのカラーを打ち出す試合内容だったが、このオープニングマッチは、大会を引き締める役割を果たしたと言っていい。

 

Maria「第2試合以降がキレイな試合だとするならば、その型にははまらなかったと思います。女子レスラーの試合って男子よりも、感情とか遺恨、プライドが、試合に色濃く出ると、自分は思っていて。そういう部分は同期だし、出たのかな。だから印象に残ってますと言ってもらえるんだなと思います」。

長与からの評価は?という問いには。

 

川畑「笑ってましたね。長与さんの心は読めないので」

 

Maria「反省を聞きに行っても、“動画を見て、自分たちで考えなさい”。大体いつも、そういう風に言われるんですけど」。川畑「勝手な想像なんですけど、自分たちで作っていきなさい。ここからどうする?と問われてる感覚。アドバイスはしてくださるんですけど、反省は言わない。自分が悪いところは自分でわかってるでしょう?というタイプの方。だから、いつか、“良し”と言わせられたらいいなと思っています」

Maria&川畑梨瑚
Maria&川畑梨瑚
Maria&川畑梨瑚
Maria&川畑梨瑚

マーベラス後楽園大会で再度対戦

Maria&川畑梨瑚

Interview

Maria & Kawahata

Mariaが提案した師弟入れ替えマッチ

5月のマーベラス後楽園大会で、Mariaが長与に提案した、師弟入れ替えマッチも、日程は決まっていないが、実現することになっている。Maria「3期生が脱退してから、マーベラスみんなが頑張ってきてると思う。3人の分を埋めるじゃないですけど、泣き言も言わず必死で頑張ってきた。誰一人苦しいとは言わなかったのは事実なんですけど、自分は、当事者でもあるし3期生で唯一残った。応援してくれてる皆さんに、全部を正直に言いたかったんですね。正直言って苦しい。その中で頑張ってるよというのを伝えたかったし。苦しい時に、なんで長与さんは他の団体には上がって、うちのリングに上がってくれないんだろう。自分の団体のことなのに。他の団体ばかり助けるんだろう。長与さんが他団体に出る度に、ちょっと頭のどっかにあって。でも言わなかった。それが、後楽園大会で、全部吐き出した形にはなりますね。長与さんにうちの興行に出て欲しかった。でも、ただ出るだけではつまんない。いいところを奪ってやろうと。プロレスは技だけじゃないと思っているので、長与さんがよく言ってる遊びの部分だったり吸収していきたいと思います」。

 

普通に考えれば、師匠の長与と組んで、川畑が堀田と組むというカードになりそうなところを、師弟を入れ替えてやりたいとMariaは提案した。Maria「そんなの、ありがちでつまんないじゃないですか。そんなつまんないのは意味ないんですよ。自分は発言してこなかった人間なんですけど。思っていても言えない。だったらガラッと変えてやろうと思っちゃたんですね。対角にいた方が、お互いの師匠から盗むことができるし、その方がチャンスがいっぱいあると思ったんですね。長与さんと堀田さん、自分は分けた方が。堀田さんは、今まで接点がないので、組んだ人の技も盗めるかな」

 

川畑「すげえなと思いましたね。その発言。長与さんを引き出す。普通はできないと思うので。みんな思ってはいると思うんですよ。女子プロレスラーなら闘ってみたい。今後のプロレス人生が変わってくると思うし、今この時代に長与さんとリング上で対戦できるのって、ほんのわずか。限られてると思う。堀田さんもそうですけど。あとどれぐらいプロレスを続けられるかわからないですし。長与さんも堀田さんも。長与さんの見せ方、仕草、目の配り方、どこまで盗めるだろうというのは、プロレスラーとして、一番のチャンスじゃないかな。レジェンドと同じリングで闘えるというのは。すごい楽しみですね」

 

長与から、いろいろなものを盗みたいと対戦を要求したMaria。レジェンドとの対戦を自分の踏み台にしようとしているように感じる。一方で、憧れの彩羽匠とのシングルマッチを望まないのか聞いてみると「いずれはやりたい。デビューした時はただ匠さんとやりたいだけだったんですけど。匠さんみたいになりたい、匠さんのような人になりたいだったんですけど、ある時から、別に匠さんにならなくてもいいじゃん。私という自我が芽生えたというか、私っていうプロレスラーを広めていきたい。匠さんとは違う道で、Mariaというものを広めていきたいし、女子プロレスを世間のみんなに知ってほしいし。自分は将来の夢とかなかったのに、そこに光が差し込んだのは匠さんのおかけだし、自分がそういう存在になりたいと自分が思うようになった。だから、今じゃないなと思うようになりました。今やっても遊ばれて終わりじゃないですけど、それだけの実力が自分にはないと思っていて。今に見てろ、次にやった時は絶対倒してやると思える時にやりたいと思ってます。何でもかんでも試合がしたいではなく、自分の考えを持って試合をしたいと思えるようになりました」と返ってきた。

 

対戦する場合とタッグを組む場合で、感覚は変わってくるはず。川畑が、彩羽匠とシングルマッチを行った時を振り返る。「自分もプロレス界に入って憧れているのは匠さんなので。自分も練習生の時にセコンドで行った極悪祭で初めて見て、こんなかっこいいレスラーがいるんだと一目惚れで。一緒なんですよ。匠さんの試合は何回も見てきてますし、癖だったり、蹴り方だったりとか、めちゃめちゃ見てきてるので、わかっているつもりなんですけど。WAVEさんでシングルをやった時に対角になるのは初めてで。見るのとやるとの違いはすごい感じさせられましたね。自分は何もできなくて。彩羽匠すげーって。後輩相手に、この後輩にはこの戦い方、この後輩にはこの見せ方、頑張らせ方、感覚でわかってるんだな。だから誰とやっても名勝負になると思う。自分も自分の戦い方に自信を持ってから闘いたいと思ってます。だけど、(清水)ひかりさんが欠場しての代打。急遽だったので、心の準備もできてない状態だったので、緊張。試合、震えてた。でも自分ができるとなっても緊張するんだと思うんですけど」。

Maria&川畑梨瑚

AAAWタッグ王者から勝利を奪った

Maria&川畑梨瑚

Interview

Maria & Kawahata

3度目の対戦も決着つかず

そして、5月のマーベラス6周年の後楽園大会で、再戦が行われた。試合時間が観客の前に表示されるカウントダウン方式が取られていた。川畑「あいつ何分リング上で息整えてるよとか、も丸見えなんです。普段は、攻撃した後に息を整えたりしてるんですけど。なんか丸裸にされてるような気分でしたね」。Maria「5分で決着つけてやると言っていたので。試合時間は10分だけど、自分の中では5分だった。いつもだったら、もうちょっと冷静に次これやってやろうと考えられるはずが、目からの情報で、ちょっとパニックになってしまったり。5分で決着つけてやると言っておいて5分が経過した時は、初めて発狂した。その時の梨瑚の顔が、やってやったぜという表情。その対比も、お客さんから見て面白かったんじゃないかなと思います。同期は3人いましたが、タイプが違ったんですよね。性格もバラバラ、得意分野も違う。同期といえども立ってるところが違う。その中で生活していたので、梨瑚とぶつかっていくうちに同期で、性格も、ちょっと引いてしまう部分だったりとか、境遇が似てたりだとか、そういう自分と似ている人と試合をすることがなかったんですよね。だからこそ、激しくぶつかり合えたんだと思います。お前、これ受けれるだろう、立ってくるだろうと思ってましたし。実際、立ってきましたし。梨瑚も一切手加減してるわけではなくて」。

 

このシングル2連戦を経て、マーベラス新木場大会ではタッグを組み、AAAWタッグ王座の査定マッチに勝利。Mariaが王者の門倉凛からピンフォールを奪い勝利した。

 

Maria「シングルを経てからのタッグ。今、きて欲しい時にきてくれる。そういう面でも信頼感がすごくあります。この前のタッグで凛さんに勝った時も、いて欲しいところにいてくれたし。何も言わなくて、アイコンタクトせずとも来てくれたし。そういうところで、安心感、信頼感がありますね。プロレスラーはリングで語り合うと言うじゃないですか。前までは、その意味がよくわからなかったんです。語り合う?試合して当たり前じゃんぐらい思ってた。プロレスのちょっと奥にいけた気がしたんですね。なるほど、自分は甘ちゃんだったな、と」。この査定マッチを経て、二人が組んでタイトル挑戦が決まった。Mariaにとっては、初のタイトルマッチとなる。Maria「決着はついてないけど、お互いの目標が一致したので。啀みあってもないし、お互い信頼し合ってると思ってるので。もちろん、次シングルやる時があれば勝ちますけど。それはきっと梨瑚も同じで。お互いに熱い思いがあるからこそ、だからそれが合わさったら大きな炎になれると思うんですよ。お互いの実力をわかっていて、信頼してるからこその、キャンプファイアぐらいの大きな炎を持ってると思ってもらいたいです」。

 

川畑「勝負の世界なので、勝ち負けは大事だと思いますが、自分は勝ち負けが決まってないと何かしちゃいけないのかとは思わないので。お互いの力量が似たようなものがあるからの引き分けなので。その力が合わさったら、どんな大きなものが生まれるのか。例えば、大きな力と小さな力のタッグだとしたら、大きな方から小さな方に力を分けなきゃいけない。それが自分たちは同じなので、足し算になる、掛け算になる。タッグとなったら、お互い今持ってる力を掛け算しようよというところですね」。6月、札幌でのタイトル挑戦では、王座奪取はならなかった。しかし、これで、物語が終わったわけではない。

Maria&川畑梨瑚

長与千種に対戦を要求するMaria

Interview

Maria & Kawahata

憧れの選手も同じで目標も同じ

話を聞いていると、尽く、二人は共通している部分が多い。似たもの同士が、自然に引き寄せられたのかもしれない。そんな二人の今後の夢も共通している。川畑「プロレス界でいったら、私たちの世代が上がっていく時だなと思っていますし。周りの同期とかはベルトを持ってたりするし、注目される試合をしている。まだ自分たちは結果を出してない。多少の焦りはある。これから上がっていかなきゃいけない。現状には満足してない。満足できる時が来るのかわからないですけど」。

 

Maria「3期生がやめた時に落ちた。私もやめたいとも思ったし。欠場もしてたし。そこからやっと復帰して。プロレスってこんなに楽しかったんだという気持ちと、ずっと心のどっかにひっかかってるモヤが、並行していて。今の状態がMAXではないと思っている。でもそんな中、やっと自分の想いを出すことができて。前は誰かについて行くとか、言われたからやるとかだったけど。引き気味で生きてたプロレスラーMariaだった。最近になって、変われてきてるんじゃないかと思う。自分がプロレスラーになる前に匠さんを見て、明日も頑張ろうとか元気をもらったりとか思ってたように、自分が夢見てたプロレスラーに少し近づけていると思う。今度は逆に、自分が未来を見せる、自分の生き様を見せていきたいと、やっと自分の意思と共に思い始めているところです」

 

まだまだ発展途上の二人だが、将来について聞くと、川畑「自分は、強さでトップを目指したいというよりは、プロレスを広めたい。でも、プロレスを広めるためには、知名度がなくてはいけない。だからトップになりたいなんですけど。自分でやり切ったなと思う時が辞め時かなとは思います。自分が目標とするプロレスが世間に知れ渡って、プロレスだけで生きていけてという状態まで持っていけるかな。自分が、どこまで持っていけるか。3年後なのか何十年後かはわからない」。

 

Maria「明確に考えたことはないんですけど。自分もプロレスで人生が変わったので、プロレス界に恩返しじゃないですけど。プロレスのトップになりたいというよりかは、プロレスを広めたい。この前、栃木の県庁前で、観戦料無料で野外で試合をしたんですが、子供がいっぱいいたんですよ。初めて見る子もいっぱいいたと思うんですが、笑顔がいっぱいで、すごく楽しそうにしてくれていて。今はプロレスを知らないけど、知ったら面白いと思ってもらえるだろうし。見にきて損はさせないと思っているので。もっともっと、小学校とか中学校に行ってプロレスをやってみたいと思う。それこそ母校とか。今は、ファンとか親とか友人とかが見にきてくれる程度。全く知らないところでリングを置いて試合をしてみたりとか、してみたいです。Mariaに憧れて入ってきてデビューしてくれる子が出てきたら嬉しいですね」

 

川畑「プロレスを知らない自分でも、こんなにハマったので。やっぱり、きっかけだなと。デスマッチとか流血は、血が苦手という方もいるので、一概に言えませんが、一般的にプロレスを見て、無理だわという人はあまりいないと思うんです。たまに女子同士が殴り合ってるのは見たくないという人はいますけど。その先があると思っているので。自分も、公園でやったり、学校の文化祭にお邪魔するとか。高校の先生とも仲が良くて。自分のデビュー戦もポスターを学校に貼ってもらったし。高校の時、やりたいことがなかったので、実際、周りもそうだった。そういう子たちにもつながるかもしれない。そうするとプロレス界の活性化にもなる。できたらいいな」

 

ちょっと楽しみな二人の今後に注目してほしい。

 

(取材・撮影=山川隆一)

Maria&川畑梨瑚

Vol.2へ

bottom of page