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Image by Olga Tutunaru

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Interview

No Guarantee vol.5掲載(2012年発行)

愛川ゆず季

グラビアアイドルとして活躍していた愛川ゆず季さん。

2010年、突然、プロレス入りすることを表明。

その後、愛川さんを中心にスターダムという女子プロレス団体が発足し、

現在は、女子プロ一の人気団体に成長している。

Interview

Yuzuki Aikawa

崖っぷちアイドルから、プロレスの世界へ

「青年誌のヤングジャンプの表紙になるのが夢で、グラビアを始めたんですけど、それがデビューして半年でかなったんですよ。そこから次の目標がまったくなくて。わたし、けっこうお嬢様で育っていて、親から仕送りももらいながら。たまに仕事をして、楽しく過ごすというのが当時のわたしのスタンスだったんです。この子に負けたくないとか、この番組にでたいとか、まったくなくて」。

順調に進んでいたかに見えたグラドル時代だったが、どうしても旬があるため、強い欲もなく過ごしていた彼女の仕事は、徐々に減ってきていた。そんな2009年、TBSのテレビ番組「崖っぷち」で、3カ月でブログ・アクセス2000万達成しなかったら強制引退という企画に挑戦。「もっと意欲をもって」という事務所の期待もあったが、本人にとっては、もちろん不本意な企画でもあった。しかし、わずか11日で目標達成。引退を回避した。

「ブログにファンの方からのコメントがあって。“おれが、絶対ゆずポンをやめさせないから” “絶対にやめないでくれ”とか何百件も。こんなに応援されていたんだなと思いました。そのとき、たまたまきた話がプロレスだったんです。もう何でもやろうと思って」。

通常であれば、プロレスをやるということに抵抗を感じるものではないかと問うと「正直言うと、事務所の人に言われたからなんですけど(笑)。わたし自身もここまでどっぷりやるとは思ってなかった。ノリで始めたっていうのが、正直なところ。ほとんど女子プロレスを見てなかったので、わたしでもできるだろうと。すぐにできるだろうというナゾな自信があったんです。最初の接点が風香選手(2010年3月に引退)だったので、彼女を見ればそんなに体も大きくないですし、怪我している印象もないですし、でもアイドルみたいな活動もされていて。イメージしかなかったので、抵抗はなかったですね。プロレスをやる限りは真剣にやらないと、プロレスラーの方に失礼だし、っていう気持ちもあったし、やるからには真剣にやりましょうと思って始めました」。

Interview

Yuzuki Aikawa

プロレスの魅力がわかってきた

「グラビア時代は、スタイリストさんとかメイクさんがいて、オリジナリティもなかったんですが。自分をプロデュースできるのがプロレス。人間くさいところを見せていいんだなっていうのがプロレスって気づいて。これもプロレスの魅力だなって思って楽しくなりました。痛いことは痛いっていうし、くやしいことはくやしいと表現するし、それが自分にあってた。プロレスやってると楽しいこともいっぱいあるし、悲しい事も、くやしいこともあるし。すごい感情が激しいので、生きてるっていう感じがします。わたし、試合前とか寝れないんですよ。終わった後も興奮して寝れなくて。試合ごとにプレッシャーとか緊張感があるから、時間の感覚は長くは感じるんですけど、終わったあとの爽快感が好きですね。充実してるのかな、早いのかな、わかんないな。早い気もしますね。一日一日を大事にしようという気持ちは以前より大きくなりましたね」。

プロレスというと、好き嫌いがはっきりわかれるジャンルでもある。実際は、見たこともなく何となく偏見で判断してしまっているケースは多いと思う。「プロレスに対して、良い印象、全然なかったんですよ。特に女子プロレスって、太った男みたいな人が、あたってないのに痛そうにやっているというイメージがあって。失礼な表現なんですけど。全然見たことないんだけど、イメージの中で。そういうイメージの人って多いと思うんですよ。でも、今スターダムでわたしたちがやってるプロレスって、わたしが見ても面白いと思うし、来てくれた人はみんな面白いって言ってくれて。わたしは、プロレスは闘いだと思っているので。わたしの顔面崩壊した姿を見てもらえばわかると思うんですけど、それぐらい全力でぶつかってるし、全力で技を受けるし。自分も思いっきり蹴ってるし。ゲームで言ったら、残りのパワーがゼロになるまで闘い続けるプロレスをやりたいなと思っています。顔がボコボコになっても構わないし。ゆずポンキックって痛いんですかって聞かれるんですけど、普通に蹴ってるんですよね。見てもらえばわかると思うんですね。ぜひ、スターダムのプロレスを1回見てもらいたいなと思う。若くてかわいい子もたくさんいると思うんで」。

スターダム代表のロッシー小川氏はこう語る。「いつも期待値以上にやってくれる。彼女自身はスターダムのセンターだと思ってないかもしれない。自分のスタンスでやりたいと思っている。でも、実際にマスコミに取り上げられる機会は一番多いわけで。彼女が、元気にやっている間に、次のスターを育てていくのが、自分たちの役目だと思っています」

Interview

Yuzuki Aikawa

目覚ましい活躍ぶりで、女子プロレスの救世主になる

デビューまでの気持ちを綴った『血心』という著書も出版されているので、経緯はそちらに詳しいが、デビュー戦では、キャリア15年の元WWWA王者の高橋奈苗に、顔面崩壊するほどボコボコにされた。しかし「とてもデビュー戦とは思えない」と、そのガッツを褒め讃えられた。いまではテコンドーで身につけたいわゆる踵落としを『ゆずポンキック』と命名し、代名詞にもなっている。そして、スターダムで新設されたシングル、タッグの2冠も獲得。2011年末には女子プロレス大賞にも輝いた。

「デビューするまでが大変でした。テコンドーをやってなかったら、プロレスをやってなかっただろうし。今のわたしはなかったんじゃないかと思う。プロレスのためにテコンドーをやってたんじゃないかと思うくらい。ゆずポンキックがあったからこそ女子プロ大賞をとれたと思うし。クラッシック・バレーをやっていて、テコンドーをやっていて、全部がつながったと思う」。

ただし、すべてが順調だったわけでもなく、辛い思いも体験している。「“ゆずポン祭り”というのをやっていて、グラビアアイドルからプロレスラーやっていて、それをよくないと思っているファンの人も多くいるのも事実で。早くやめてくれとかいう声も聞こえてきます。応援してくれる人ももちろんいますけど。そういう中で、愛川ゆず季を殺しに行きますっていう殺人予告がきたんですよ。興行で、そういうことがあると、、、ダンプ松本選手との試合の前だったんですけど。闘いに対してのプレッシャーもありましたし。そういうことがあって、精神的に大変なこともありました」という。

「去年、女子プロレス大賞を受賞させていただいたんですけど、それを目標にしてたんですけど、“え、まさかわたしが獲れたんだ”じゃなくて“あ、よかったな”ぐらいで。でも、そんなに自分の試合に満足してるわけじゃくて、落ち込む事もたくさんあるし。実際、獲れたからといって、タレント的な活動も変わってないし、全然まだまだだなと思っているので。この賞を獲ったことさえ、事務所の人が知らないこともあったんですよね。マラソン走った時は、ゆずポンすごいねって感じだったんですけど、そんなに反応がよくなくって。そんなもんなのかなって、自分の中で思ってしまう部分もあって。そこが、悩んでるところですけど。わたしはもっともっと上に行きたいし。女子プロレスをもっと極めたいと思っているので。まだまだできることはあるんじゃないかなと思ってます」。

テレビドラマ出演で認知度アップ

昨年秋から放映されたテレビドラマ『これが噂のエルパラシオ』にもレスラー役として出演。プロレスシーンを大いに引き締めていた。「それまで、チョイ役で、巨乳Aとか(笑)キャバクラ嬢みたいな役しかなかったんですけど。試合やりながらだったんで、怪我のリスクもあるけれども、それで良いと言ってくれたんで引き受けたんですけど、ホントに大変でした。スケジュールが一番(の問題)で。朝の4時半に起きて終電で帰るみたいな生活。寝ないで試合して、ずっと撮影、撮影、撮影。その中で試合して。ドラマの中でも試合のシーンがあって。ずっと体のダメージがあるままで。その中でタイトルマッチがあったりとか。頭が爆発しそうになりましたね。あと、お芝居の経験もあまりないので、大変でした。でも、そっちはサトエリさんとか共演者の人に助けてもらって。で、わたしはプロレスのシーンを他の人にアドバイスしたりとかして、助け合ってできたドラマだと思います。今でも“エルパラ”の子は集まったりしてますよ。わたしがプロレスやってることは知ってても、どういう試合やってるかは知らないと思うので、ドラマの中でも試合を見せていきたいなという気持ちが強かったですね。愛川ゆず季を見せるチャンスだと思ってました」。

「わたしは『グラレスラー』で、両方やっていくのがわたし。売れっ子のタレントさんも分刻みのスケジュールでやってると思うんですけど。ドラマやりながら、試合やって。仕事しながら試合やって。ほとんど寝てないときに試合やって。試合ってなると怪我のリスクとか、命に関わることになるかもしれない。スケジュールの問題で、事務所ともめたりとか。やっぱ、やってる人しかわからないので。そのへんの意志の疎通が難しかったりとか。あと、顔がボコボコになって、そのまま撮影するとか。そういうのは、日常茶飯事だったので、そのへんは理解してもらって周りの人に支えられてお仕事させてもらってるんですけど。すごい、それが辛かった。わたし以外できないんじゃないかという気持ちにもなりました」。

2012年2月に、地元・愛媛で行われたフルマラソンに挑戦。見事、完走を果たした。「わたし、人生で6キロしか走ったことないんですよ。どうしようとなったときに、(ドラマで共演した澤山)璃奈ちゃんがマラソン走っていて、コツを教えてくれて、メールくれて。プロレスのときはわたしがアドバイスして、フルマラソンのときは教えてもらって」。初めてのチャレンジで完走とはスゴイというと「ノリで。プロレスもノリだったんですけど、変な自信があるんですよ。5時間50分かかりましたけど(笑)」。

プロフィール

1983年5月16日生まれ。愛媛県出身。2003年芸能界デビュー。日テレジェニック2005。写真集、DVD多数。2010年10月31日、高橋奈苗戦でプロレス・デビュー。同7月24日、初代ワンダー・オブ・スターダム王座獲得。同11月には、美闘陽子とのコンビでゴッデス・オブ・スターダム王座獲得。2011年東京スポーツ・プロレス大賞で女子プロレス大賞受賞。2011年日刊スポーツ女子プロレス最優秀選手、敢闘賞、最優秀タッグ賞を受賞。2012年春から第2のグラレスラーを育てるプログラムも発足、グラレスラーというカテゴリー拡大も狙っている。

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Yuzuki Aikawa

夢を実現させるために自分をプロデュース

デビュー戦からはじまった『ゆずポン祭り』という定期的なイベントも今では、興行プロデュースも手掛けるようになった。「わたしが、自分自身の一番のファンなんですよ。なので、ゆずポンにはこうしてほしいとか、こういうゆずポンを見たいというのはそのまま表現しているので、多分、自分好きっていうのが、でっかくなってのプロデュースにつながってるんじゃないかと思いますね。ホント一番のファンだと思います」。一番のファンから見て、自己分析した魅力とは?「何をしだすかわからないなっていうところがあって。例えば、リングの上で、ベルトを持ってグラビアポースをとるとか、一歩間違うと怒られることだし。でも、それが自分の色だと思うんで。そうやってメチャクチャなことをして、今までのプロレスを壊していけるじゃないですけど、プロレスラーっぽくないプロレスラー、でも試合はしっかりしているっていうのを、ファンとしては見たいと思います」。

ゆず季という名前は本名。

ゆずポンという愛称も気に入っている。

「芸能界デビューしてからの夢が、“ゆずぽん”のCMに出ることなんですよ。それはブレてなくて。ただのプロレスラーになりたいわけでなくて。プロレスだけやってたらキャリアが上の選手にはプロレスだけでは勝てないんですよ。どう頑張っても。プラスαで、グラビアやタレント活動とか含めてのグラレスラー・愛川ゆず季だったら勝てるんじゃないかと思ったので、自分だけの色を大事にして、『グラレスラー』にプライドを持ってやっていきたい。夢もブレてないし、CMに出るためには、知名度も必要だし、もっともっと頑張っていかなければいけないんじゃないかと思っています」。

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