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Image by Olga Tutunaru

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Interview

No Guarantee vol.15掲載(2017年発行)

トニー・ストーム

女子プロレス団体・スターダムに所属するトニー・ストーム。

準レギュラーとして、スターダムに定期的に参戦し、人気も着実に上がっている。2017年は、春のシンデレラ・トーナメント、夏のシングルの祭典5☆STAR GPも制し、9月には遂にシングルベルトのトップであるワールド・オブ・スターダム王座も獲得した。

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Toni Storm

スターダムに参戦

 トニーがスターダムに初参戦したのは、2016年5月に行われた初代SWA世界王者を決めるヨーロッパツアー。決勝戦に進出、紫雷イオに敗れたものの、存在感を示した。それを受けて7月に来日。このときは、スターダム初の外国人所属選手のチェルシーといっしょだった。試合を重ねる度に頭角を表し、他の外国人選手を凌ぐインパクトを残した。ダイビング・ギロチンドロップや場外へのトペ、投げっぱなしのジャーマン・スープレックスなど、日本にファンにもわかりやすいスタイルが受け入れられたと言っても良い。そしてついには、紫雷イオからSWA王座を奪うことに成功した。以来、防衛を重る快進撃、2016年10月には、スターダム所属になることが発表された。

 トニーがプロレスに興味を持ったきっかけは「10歳のときにWWEをテレビで見て、とても面白かった」ことだった。以来、「熱狂的ファンになり、私がやりたいことはこれだと思いました」。近所に、レスリングスクールを見つけ、母親に「何度も何度も頼み込みました。トレーニングに行かせてほしいと」。学校では、いろんなスポーツを試してみた。「柔術、レスリング、いろんなことをやってみました。その中でも柔術は面白かったけど、両方習うことはできないのでレスリングを選びました」。当時はオーストラリアに住んでいたのだが、家族がイギリスにいたこともあり、13歳のときにイギリスに渡り、トレーニングを積んだ。

 インターネットのおかげで、世界中の情報が伝わるようになったとはいえ、オーストラリアやイギリスのプロレスの情報が日本に入ってくることは少ない。YouTubeなどで映像を見ても、学校の体育館のようなところや、クラブのようなナイトスポットで試合をしているものがほとんど。WWE以外のプロモーションが置かれた状況を象徴しているかのようでもある。「オーストラリアのマーケットは成長過程。競技人口は増えてきているけど、まだまだ。それに比べるとイギリスは、人気もあり競技レベルも高い。だから、技術的に学ぶことも多いし、知名度も上がります。オーストラリア出身の選手もWWEに行くこともあるけど、まだ少ないですね」

プロレスへの興味

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Toni Storm

ステップアップ

 日本の女子団体の中では、試合数や集客の面でスターダムが頭ひとつ抜けている感が強い。

「スターダムの試合は見れるものはずっと見てました。何年もスターダムのファンでした。だから憧れのリングだったんです。ロンドン、スペイン、フランスを回ったスターダム・ヨーロッパ・ツアーに参加し、ロッシー(小川=スターダム社長)に会いました。紫雷イオ、岩谷麻優、宝城カイリと対戦したときは、夢が現実になった。WAO!」。その内容が評価され、2016年6月、スターダムへの来日がすぐに実現した。「何年も夢見てきたので、その場にいることが誇りに思えました。このリングに立つことは夢だったので。大阪でSWA王座を穫りました。紫雷イオに勝ったのは、信じられませんでした。I cry!(笑)自分がそんな大きいことを成し遂げられるとは思ってなかったので予想外でした。なので感激でした。彼女はベスト。すごい良い日でした。まさか、自分が勝てるとは思わなかったです」。SWA王座を獲得して以来、順調に防衛を重ねている。「今までできないと思ってたことができたので、もっとできるということがわかりました。もっと先にいけるんじゃないかと思いました。次を目指すきっかけになった。NO LIMITと感じてる。それがモチベーションになってます。自分をプッシュしてよりハードに追い込める。高みに行った分、落とせないプレッシャーもあります。チャンピオンだから、常に完璧であらねばならないという意識も高まってます」

 スターダムでは、春にワンデーで行われるシンデレラ・トーナメントで優勝(2017年)。その勢いで、紫雷イオの赤いベルトにチャレンジ。得意のストロングゼロでノックアウト寸前にまで追い込んだが、タイムアップでベルト奪取には至らなかった。この頃から、試合スタイルに変化があった。技への“入り”が、急激にスピーディになったのだ。技へ入る“溜め”をつくる選手が多い中、とても珍しいスタイルだ。「相手が回避できないようにするためでもあり、より痛みを与えるためでもあります。勝つための方法だと思ってます」ちなみに試合スタイルのイメージが日本のブル中野(日本人唯一のWWF女子王者)に似てるなと思っていたので、知っているかと問うと「ブル中野とメデューサの試合はテレビで見ました。スターダムに来るまでは会ったことがなかったですが、3月か4月のWWEアクセスで初めて会いました。お母さんと娘と言われることがあります(笑)。ダイビング・ギロチンドロップは真似てました。でも自分の身体が痛すぎるで、今は使うのを止めてます(笑)。いつかやるかもしれないけど」。好きな技は「パイルドライバー!速い!フィニッシュにしてます。ストロングゼロと言ってます。ストロングゼロが飲むと頭が痛くなるから、その名前にしました。いまやりたい技は、ダイビングヘッドバット。公開できるのも、もうすぐです。技に練習は、道場やジムでやります。うまくいけば自分のものにしていきます。過去のものを取り入れたり、テレビで他の選手の動きを見て勉強しますが、とにかく練習あるのみです」。

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Toni Storm

オーストラリアでデビュー

 デビューは2011年5月。「デビューまではトレーニングを始めてから2、3ヶ月ぐらい。基礎の修得は早かったですね。やれることは全部やりました。1ヶ月ほとんど休まずにトレーニングした。身体が痛いときもあったけど、楽しんでました」。オーストラリア時代、一時マスクを被って試合をしていたときもあった。「そのプロモーションの代表が、日本のみちのくプロレスの影響を受けていて、選手はみんなマスクをしてました。16とか17歳ぐらいだったので、被るのが楽しかったですね(笑)。でも試合をしていて息苦しいから、今は被ろうとは思わないです」。

 2013年には、REINA女子プロレスに初来日、2試合を闘った。「17歳のとき。この時はオーストラリアに住んでましたね。日本には5日間滞在しましたが、印象は良かったです。ただ若すぎたし、ナーバスになってたので情報や文化を吸収するような経験をできるという心の準備もできてませんでした。20歳で再び来たときは、大人になったので、いろいろ目を向けられて吸収できました」。そして翌2014年には、憧れのWWEのトライアウトに参加。「最初のトライアウト。18歳で初めてだったので、リズムも掴めない。何をどうしていいかわからない。緊張と何が起こるかわからない怖さや不安が先行してました。難しいです。場慣れも必要だし、間違いなくもっと経験を積んだほうがよいと思いました。最初だったので、悲惨な内容だったと思います」。残念ながら合格にならなかった。

 この頃から主戦場はイギリスになっていく。「18歳のときに家族がいるという理由もあったがイギリスに移りました。イギリスはプロレスも発展してるし、トレーニングもできる、学ぶことも多い。いろんな経験もできます。観衆もオーストラリアより多いし、ポピュラーです。母と妹はオーストラリアにいるのでクリスマスのときに会うぐらい。でも、経験とかプロレスを知る機会はオーストラリアよりイギリスにいる方が、自分の成長につながると考えてました。ヨーロッパは陸続きでいろんなところに行けます。ドイツや、スペイン、フランス。いろんな土地も見れるのも理由。もし、オーストラリアにいたら、自分が知られるチャンスも減ると思いますね」そこで、いまにつながるブリティッシュスタイルを身につけた。試合序盤に見せるグランドの攻防やエルボースマッシュがその証。

プロフィール

TONI STORM

本名:Toni Rossall 身長166cm、体重65kg 1995年10月19日、ニュージーランド・オークランド生まれ。

トレーナー:Mason Childs(Impact Pro Wrestling Australia)、デビュー:2009年10月9日

主な獲得タイトル:BEW女子王座、IPW女子王座、PROGRESS女子王座、SWA世界王座、ワールド・オブ・スターダム王座

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Toni Storm

WWE再び

 2017年7月には、WWEのメイ・ヤング・クラシック・トーナメントに参加。これは世界中から集められたトップクラスの選手たちがエントリー。次期契約候補が集まり、自分の力をプレゼンテーションするような意味も見てとれた。最初にエントリー発表されたのはトニー。このトーナメントは、スターダムの宝城カイリ(WWEでのリングネームはカイリ・セイン)がWWEと契約して最初の参戦大会でもあり、日本でも注目され最終的に32人が参加した。そのうち9人がスターダムに参戦してきた選手。結果、世界からのスターダムへの注目度の高さを示したものになった。さらに、WWEのPR画像でも、トニーはセンターにもってこられていて評価の高さを表していた。「スターダムの参加者は多かったですね。カイリ、ベイズラー、ケイリーレイ、バイパー、スターダムはナンバーワン!WWEは世界最大。10歳からの夢が叶ってベリーエキサイティングな気持ち。ハッピーでした。WWEはテレビで長い間やってるし、よく知られてます。多くの人が見るので、その場にいることはグレート。ブランドがしっかりあるし、ジムとか施設とか充実していて選手への扱いもとても良いです。ベリーナイス!」

 そして、シングルの祭典5★STAR GPでは、途中、WWEのテレビ収録のためにアメリカと往復するハードスケジュールの中、見事勝ち抜き優勝を果たした。

 来日中は、一緒に参加している外国人勢と生活を伴にする。「楽しんでますよ。トレーニングをしっかりして。他のガイジンとよく出掛けます。観光したり。おいしい食べ物を探しにいったり。トレーニングのあとはリラックス。メリハリはしっかりしてます。好きな食べ物はラーメン。オイシイ!」

趣味はという問いに「レスリング。ジムに行って。自分の人生は、レスリング。強いて言えば、家族と過ごす時間。それ以外にと言われるとわからない。いまの生活は、レスリング、レスリング、レスリング!過去には恋人もいました。みんなレスリングをやってる人。でもときどき、彼氏が邪魔になるときがあるんです(笑)。レスリングに集中したいんですよ。レスリングがナンバーワンラブ」

2017年で22歳。そしてキャリア8年。まだまだ伸び代がある年齢。これから先、どれだけ大きな存在になるか想像もできない。将来の夢、「スターダムでベストになるために時間を使っていきたい。スターダムだけでなくいつかはWWEでやってみたいと思いますが。いまはレスリングだけ。その他の夢はわかりません」

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