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SPECIAL Interview
No Guarantee web magazine(2025.11)
ビクトリア弓月インタビュー vol.2

VICTORIA YUZUKI STORY

マリーゴールド旗揚げ戦では高橋奈七永を相手に何もできなかった

2度目の後楽園ホール大会ではSareeeと対戦
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Yuzuki
マリーゴールド旗揚げに参加
スターダムでデビューしてプロレスラーとして順調な歩みを始めたが、団体内でさまざまな問題が浮上、その騒動に巻き込まれていく。創設者のロッシー小川氏が解任され、新団体を設立。それが現在のマリーゴールドになるのだが。デビュー1年目の新人である弓月は、新団体への参加を選択した。「自分がまだ1年経ってない。4カ月ぐらいしかスターダムでやってない。その4カ月でも濃くて。いろいろ濃かったと思ってます。最初、自分も迷ってた部分もあって。スターダムにいた方がいいかなとか。このキャリアっていうのもあったんで。でも、小川さんの方に行くって決めて、小川さんの家に行って。で、自分は小川さんについていきますと言いました。ちょっと色々ありすぎて、もうなんか記憶がおかしくなってきますが、、」。
「自分はとにかく小川さんについていきたいというのがあったんで。ついていくなら、やっぱ小川さん。小川さんのプロレス頭に惹かれてるところもあったんで。ついていきたいなって思う人のところに行った方がいいなと思えて。スターダムに入った時に、この人すごいなと思っていて。その考えのまま小川さんについていった。まあ大丈夫だろうっていう、怖い部分もありますけど、正直、いろいろ結構ありましたけど。でも、なんか大丈夫な気がしてました」
移籍を機に、リングネームもビクトリア弓月に改名された。
「変わりましたね。なんかすごいインパクト出てきちゃいましたよね。(1970年代に活躍した)ビクトリア富士美さんは多分あんまり関係なかったと思うんですけど。小川さんが、ビクトリア女王、いいの思いついたんだよって。ビクトリア弓月ってどう? と。最初、いやいやいや、っていう感じだってたんですけど。でも、こういうものって、ずっと使っていくから、みんなが慣れていく。最初はそんなことないでしょって思いながら。確かに、今思えば、自分と言えばビクトリア弓月。皆さんにも浸透してきてるのを感じる機会が何回もあるので。正解だったな、今はこの名前にして正解だなって思います」
迎えた5月20日の旗揚げ戦。対戦相手は、キャリアで親子ほどの差がある高橋奈七永さん(2025年引退)。しかも、第1試合、団体としてのオープニングマッチという大事な位置付けの試合だった。
「何もできなかったんですよ、本当に。自分の普段できていたものができなくなったりとか。緊張もすごいですし。奈七永さんにやられてばっかの自分に、何もできない自分に、すごい悔しくて。試合後も泣いて。プレッシャーというか、緊張感というか、押しつぶされていたような感じ。お客さんがめっちゃいて、旗揚げっていうすごい大事な日で。奈七永さんっていう大先輩で、オープニングマッチでって。このいろんなものが出てきちゃって。ずっと、どうしようどうしようって。試合が決まってからも、どうしようっていう不安な気持ちでいっぱいで。でも、やるしかないって思ってたんですけど。何もできなくて」
そして2度目の後楽園ホール大会ではSareeeに噛み付いた。
「旗揚げのオープニングマッチで、すごい悔しい思いをしたからこそ、Sareeeさんというすごいレスラー、気持ちも強くて、そういう人と試合をするってなったら、あの時(旗揚げ戦)と同じことはしたくないと自分の中で思って。どうにかしてでも食らいつきたいと思ってました。あの試合は自分で、オープニングマッチより良かったと自負してるんですけど。Sareeeさんからも、いろんな刺激を受けたというか。いやもう、なんて言うんですかね、なんかやらなきゃいけないっていうか。自分がやらないと自分が今後成長できない。ここで変えなきゃもう後がないみたいなぐらいの気持ちを作ってたので。そういうところは出せたんじゃないかなと思ってます。心だけは折れないよう。心が折れたらやられちゃう。やられても食らいつく。そこだけを考えて。技を考えてみたりしてました。勝ち負けにこだわってないと言ったら嘘になるんですけど。もちろん勝つ気持ちでいってるんですけど。勝つために、どういうふうにSareeeさんの隙をつこうとか考えながら。やってたところはあります」。この時、Sareeeから「1年目?」と驚きの反応を引き出した。

2025年最初の大田区大会でスーパーフライ王者に

林下詩美とのタッグは“姉妹タッグ”と呼んでいた

2024年夏にマリーゴールドに加入した田中きずなと

きずなとのコンビはセレーネ・フローラというタッグ名がついた
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Yuzuki
中身の濃い2年目のキャリア
そして、マリーゴールド最初の両国国技館大会で、移籍してきたばかりの田中きずなとタッグを組んだ。セレーネ・フローラというタッグ名もつけられた。
「きいたん(田中きずな)の復帰戦で組んで。その後から組むことが結構多くて。で、組んでるうちに、タッグ名があった方がよくない?ってなってタッグ名つけて。同級生でもありますし、同期でもあるんで。自分たちも組んでいて、2人でセンター取りたいとか、2人で獲りたいねみたいな感じ」
その後、ワールド王者・林下詩美ともタッグを組むようになり、“姉妹タッグ”と呼んでいた。「なんかわかんなくなってきちゃいました。いろんなタッグがある。正式って言っていいのか、わかんないんですよね。きいたんとかのやつも正式って言っていいのかわかんないんですよ。両国で組んで、2人は同級生だし、同期だし。これから2人でやっていきたいねっていうのはあったんで。詩美さんとは、横浜ラジアントで試合した時に、タッグを組んで、その日に挑戦表明したんです。その日のバクステで正式タッグ。詩美さんと組んでやっていきたいですっていうのを言って」。タッグ王座奪取はならなかったが、その後も、タッグを組む機会も多かった。
年が明けて2025年1月3日、大田区体育館で初戴冠。翔月なつみからスーパーフライ王座を獲得。
「嬉しいですね。これはずっと欲しかったっていうか、旗揚げから狙っていたベルト。スーパーフライの初代王者を決めるトーナメントには入れなかくて、悔しい気持ちはあったので、絶対獲りたいなと思っていました。ついに獲れて。なつみさん、3度目なんですよ。挑戦自体は2回なんですけど、DREAM✴︎STAR GPでドロー。それも含め3度目の正直。グランドスラムの1つを作れてよかったです」
2025年5月、憧れの存在でもあった岩谷麻優がマリーゴールドに移籍してきた。岩谷は入団会見でグランドスラム宣言も行っており、弓月と目標が重なった。その岩谷と2周年大会で対戦。ベルトを奪われてしまった。しかし対戦後のリングで岩谷が「1年目ですごいよ。タッグ組んでもいいね」と讃えた。
「目標が同じだからこそ。麻優さんを超える、憧れを捨てるっていうのをずっと言ってるんですけど。スーパーフライではできなかったので。グランドスラムまで先越されては、いつまで経っても憧れ越えはできないと思って。どうにかして自分が先に達成したいなと思ってます」

マリーゴールド自前の道場が完成。思う存分、練習できる環境が整った

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道場ができたことで見えてきたこと
2025年7月にはマリーゴールド自前の道場も完成。それまでは練習できる場所や時間に制限があったが、思う存分、練習できる環境も整った。
「もっと精度を磨いていかなきゃいけないなと思ってます。今、近藤修司さんがコーチで就任してくださって。1個1個教えてもらう、意味を理解しながらできてるっていうのもありますし。試合に出して、それが成功した時に、これまでやってきたことも、もちろん意味があることだったんですけど。理屈をしっかり理解しながら、一からまた基礎を学び始めたっていうので、もう1回原点に戻ってやれてる。だからより成長してるなって感じます。それは自分だけじゃなくて、マリーゴールド全体としての士気も上がってるんじゃないかなと思います。感覚でやってたこと、自分は天才とかじゃないんですよ、私、ほんとに不器用なんです。その時はあんまできないことが多いんですけど、何回か練習して、ある時急にフッとできるみたいな。だから、感覚ともなんか違うかもしれないんですけど。でも、プラスに捉えながら、試合に組み込んだら面白くなるというか。自分が、その試合で目立っていけるというか。インパクトを残すために、何したらいいのかなっていうのは、確かに考えるようになったというか。何したら面白いかなとかは、すごい考えるようになりましたね。お客さんがどうしたら乗ってくれるかなとか」

DREAM✴︎STAR GPではベストマッチ賞を受賞

スーパーフライ王座は岩谷麻優に奪われた

2025年の両国国技館大会で、ユナイテッド・ナショナル王者に。
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Yuzuki
第2章の始まり
そして、シングルの祭典DREAM✴︎STAR GPで準優勝。岩谷麻優との試合がベストマッチ賞となった。「去年、初めてDREAM✴︎STAR GPに出た時は、予選から始まって、先輩というか上の人たち、強敵が揃ってるところについていかなきゃいけないっていう気持ちでやってたんですけど。今回は、スーパーフライも獲ってからだったし。スーパーフライを落としてから、じゃあ、自分、そのスーパーフライを捨てたわけじゃなくて、次の段階としてエースになりたいって言ってる、そういう段階として、次のステップってなったら、やっぱり白だなって。そういう目標を持ちながらやっていたのもあって。この結果は、嬉しさもある反面、優勝を狙っていたからこそ、悔しいというか。麻優さんとも引き分けてっていう結果は、もちろん、自分が成長したのかなって気づくきっかけだったんですけど。でもやっぱり、結果は結果というか。優勝を狙ってたから、悔しいなという気持ちの方が大きいですね」
優勝できなかった悔しさは残るものの「でも絶対忘れられない日になります。準優勝っていうトロフィーと、ベストマッチ賞というトロフィーを、まさか自分がもらうって。去年の自分から成長を感じる。自分でも勢いに乗ってるって思います」
今後については「結構ルチャとかも好きなんですけど、人とは違う、人ができないような動きとか、自分だけができるような。そういうものをもっと極めていって、唯一無二のプロレスラーになれるように頑張っていきたいなと思ってます。マリーゴールドの未来は明るいっていうのを見せたいです!」
(取材・撮影=山川隆一)

同期の瀬戸レアともライバル・ストーリーは続いている

グランドスラムへ近づくUN王座戴冠

ベルト奪取で感涙

オリジナルのビクトリー・シューティングが最近のフィニッシュホールド
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Yuzuki
ビクトリア弓月が選んだ記憶に残る試合
1デビュー戦(2023年11月17日、大阪・アゼリア大正ホール、渡辺桃戦)
2新人王決定トーナメント(2024年1月3日、横浜武道館、HANAKO戦)
3ベルト(フューチャー)初挑戦(2024年2月4日、エディオンアリーナ大阪・第2競技場、吏南戦)
4マリーゴールド旗揚げ戦(2024年5月20日、後楽園ホール、高橋奈七永戦)
5初戴冠(2025年1月3日、横浜武道館、翔月なつみ戦)
6憧れ越えの岩谷麻優戦(2025年1月3日、国立代々木競技場第2体育館、岩谷麻優戦)

翔月なつみとは3度目の対戦でスーパーフライ王座を奪った

初のタイトルマッチは吏南戦(写真は吏南とのシングル戦)