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Image by Olga Tutunaru

SPECIAL

SPECIAL Interview 林下詩美

No Guarantee web magazine(2025.1)

林下詩美は、ビッグダディこと林下清志氏の三女として生まれた。幼少期からテレビ番組で密着撮影されて放映されていたこともあり、「ビッグダディの娘」という言われ方がついてまわっていた。現在は、女子プロレス団体マリーゴールドに所属。2025年に団体トップのベルトを獲得し、エースとして団体を引っ張っている。

 
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UTAMI HAYASHISHITA STORY

SPECIAL Interview

Utami Hayashishita

愛をもらって育てられた

 子供の頃は「静かな子でした。仲の良い友達とか家族とは元気に遊んでたんですけど。基本的に静か。みんなの話を聞いている静かな子だったと思います」。
テレビ番組に関しては「学校で“テレビ見たよ”とかはありましたけど、やってた頃は自分ん家にテレビがなかった。自分が見てないので、なんか、自分のことだけど、人ごとだなと聞いてました。へえ、そうなんだあ、という感じです。映されてることにも何もなかったし、スタッフさんも家族みたいな感じだったので。撮られてるという感じもなかったし。放送されてからも、自分たちが出てたよという感じではなかったですね」。
 子供の頃の夢については「普通の家族って言ったらアレですけど。小さい頃、兄弟とか親に愛をもらって育ってたので。私も普通のお母さんになって、かわいい子供もできて、たくさん愛を注いだ普通の家庭を築きたいなと思ってました。小学生までは魔法使いになりたいとかはありましたけど(笑)。何かの憧れとかはなかったですね。ご飯が好きだったので、料理関係とか、小さい子が好きなので保育関係とか、普通の仕事をするもんだと思ってました」。
 

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SPECIAL Interview

Utami Hayashishita

TAJIRIの試合を見てプロレスの面白さを発見

 運動に関しては、水泳や柔道はやっていたが、球技は苦手だったという。そんな林下がプロレスと出会ったのは、中学2年生の時。「YoutubeでTAJIRIさんのプロレスを見て、プロレスを好きになって、そこからいろんな動画を見たり。地方に住んでいたので、来たら見てました。生観戦も中2が初めてだったかな。家族が好きだったので、プロレスは知ってましたけど。私の中でのイメージは、デカいおっさん同士の殴り合いだと思ってたので、見て何が楽しいんだと思ってました。実際にTAJIRIさんの試合を見た時に、蹴ったりとかもありましたけど、技で、毒霧とか、タランチュラとか、ハンドスプリング・エルボーで飛んできたりとか、そういうのを見て、プロレスって殴るだけじゃないんだ、オモシロッ!と思って好きになりましたね」
 TAJIRIはWWEでも活躍していたメジャーリーガーでもあるが、この時期は自身でWNC(Wrestling New Classic)を主宰していた。WNCには女子選手も所属しており「女子はあることは知ってましたが、全然詳しくなくて。真琴さんが好きでした。でもいろんな団体があるとか、女子プロレスがあるとかは、全然、知らなくて」。その辺りから、プロレスの動画を見るようになり、週刊プロレスの全身名鑑を見て知識を増やしていった。「名前は見たことはあっても試合を見たことはなくて。イオさんを初めて見たのが、TAKAみちのくさんの25周年だかの興行(2017年9月4日)を見に行った時。イオさんが葉月さん(当時の表記はHZK)とタッグで出てたんです。あ、紫雷イオって聞いたことあると思って。で、入場から試合から、すごくカッコよくて。その頃からイオさんに惹かれてました。女子の凄い選手がいるって。一度、真琴さんが出てる団体を見に行ったことがあって。女子だけの団体もあるんだなというのを知りました」。

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Utami Hayashishita

プロレスラーは魔法使い

 中学卒業時、プロレスラーになりたいという想いはあったが、家族と何気なく会話している中で高校は出ておいた方がよいという意見もあり、高校に進学。柔道も高校までは続けていた。そして、高校卒業後は、東京に出てきて就職した。「プロレスラーって、そんな簡単になれるもんじゃない。自分の中でプロレスラーは魔法使い同様の凄い存在だったので。なれないもんだと思ってました」。東京はプロレスの大会も多く開催されているため生で観戦する機会も増えた。
 「それまではずっと(住まいが)地方だったので。生観戦することもあまりできなくて。東京に行ってから、後楽園ホールとかいろんなところで試合を見るようになりました」。そして、プロレスラーになりたいという想いが消えず、仕事帰りにふと「プロレス面白かったな、やっぱプロレスラーになりたいなと急に思って、会社の寮に着くまでの間にコンビニで履歴書買って、その日のうちに書いてスターダムに送りました」。
 当時、イオが所属していたのがスターダムだったからだ。

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Utami Hayashishita

スターダムでプロレスラーに

「すぐ、(代表の)小川さんから電話がかかってきて。この日に新木場大会があるから見にきてくださいと言われて。この時、スターダムという団体を初めて生で見て。ずっと男子を見てたので、女子もいいけど男子の方が凄いという気持ちがその時あったんですけど。スターダムを見て、自分より年下の人がいて、その人たちが頑張っていて、激しい試合をしてるのを見て、女子でこんなに凄い、スターダムって凄いとなって。絶対ここに入ろうと思いました」。小川氏との面談時「ビッグダディ見てたよ。ビッグダディを見ていていっぱい姉妹がいる中で、この子がレスラーになったらいいなと思ってた子が君なんだよね、と言われて。めっちゃ運命感じると思いました」。
 そしてスターダムへの入団が決まり、会社を辞める。
「柔道は高校までだったので。プロレスラーになったら絶対大変だろうなと思って。会社を辞めてから入寮するまでの間に、引越のバイトをしました。引越屋ってめっちゃたくさん物を運ぶだろうな、いっぱい疲れるだろうし。プロレスラーは、もっと使うだろう、力つけなきゃと思ってやりました」。
しかし、憧れのイオは2018年5月に退団を発表、6月末にWWE入団が発表された。
林下は2018年3月に入団、7月にプロテスト合格、8月にデビュー。プロとしては、入れ違いとなってしまい、リング上で接点を持つことはできなかった。
「(プロレスは)しんどいと思って入ってきたけど、やっぱりしんどい、キツイ。筋トレとか練習とか思った以上に全然きつかったんですけど。キツイもんだと思ってたのが、やっぱキツイな。毎日、すごく必死でしたね。道場にいる時間も長くて。朝練して、昼練して、夕方からの学生練習に入って家に帰って。また翌日やって。週末になったら大会の準備して。だったので、毎日が忙しくて。何かを考える暇はなかったですね」。
 

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Utami Hayashishita

デビュー後は怒涛の快進撃

 入門当時は、花月を中心にみんなで教えてくれたという。
デビュー戦は2018年8月12日後楽園ホール、相手はジャングル叫女。
デビュー戦の印象は「自分が見に来てた場所だ。緊張はしてなくて。リングの上で家族と写真撮ったんですけど。写真撮れた、そいうことばかり考えていて。自分はパワーファイターとして頑張っていくと言ってたので、当時のスターダムのパワーファイターの代表のジャングル叫女さんとデビュー戦から闘えるというのは嬉しかったし。この人を越えなきゃなとは思いました」。
 周りの反応は「家族もプロレスは好きだったので、応援はしてくれてましたけど。当時、自分が人見知りを拗らせすぎてまして。家族以外と喋ることが苦手だったので。プロレスラーって、人前に出て、喋ったり、試合しなきゃいけないけど、本当に大丈夫?という心配はされてました」。
とはいえ「人前に出るのは凄い嫌いだったんですけど。それを差し引いてでも、プロレスラーになりたいという気持ちが強かった」。
 デビュー戦では、周りの声が聞こえる人とまったく聞こえない人に分かれる傾向がある。
「自分がプロレスを見るときは、声出して応援してた方なんですけど。人の声援って、こんな力になるんだなと思いました。みんなに名前呼んでもらえたり、手拍子されることが。試合中、まだ頑張れる、頑張らなきゃという気持ちになるなと思いました。お客さんの声は聞こえるんですが、セコンドの声かと残り試合時間何分とかは聞こえないタイプです。気づいたら残り3分ということになることもあります」。
 ビッグダディの娘ということで注目されたデビュー戦以降、1年目から快進撃が続いた。デビューして間もなく開催されたシングルの祭典5★STAR GPに初出場し準優勝。11月には渡辺桃とのコンビでゴッデス・オブ・スターダム王座獲得。12月には新人王獲得、年末の東京スポーツのプロレス大賞では、男子を差し置いて新人賞を獲得した。年が明けても、1月にフューチャー・オブ・スターダム、SWA世界、EVEインターナショナルを獲得し、4冠王者となった。
「最多でベルト4本持っていて。すごく忙しい。防衛して、次、防衛してという日が続く日々で。自分の中では、チャンピオンでいなきゃという、気が休まらない時間。でも、それがあったから、今みたいに強くなれた。身も心も強くなれた時間だったと思います」。
 この時期を振り返ると「練習生からいつも目の前のこと、1試合1試合、やることに必死だったので、タイトルマッチして練習して、タイトルマッチして練習して、の日々だったので。不安はもちろんあったんですけどデビュー数カ月で、自分、大丈夫かなとかもあったんですけど。動画を見返して、動きが全然できてないなとか。でも、既にチャンピオンだったので。じゃあどうしようとなった時に、でも私、チャンピオンだから。考える間もなく次に進めてかなきゃという気持ちが強くて。悩むとか凹むよりも、ここがダメだった、じゃあ次頑張んなきゃ。チャンピオンだったからこそ凹まずに頑張ってこれた」。

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Utami Hayashishita

林下詩美プロフィール

1998年9月14日生まれ、鹿児島県奄美市出身。身長166cm、体重65kg。柔道初段。
プロレス・デビューは2018年8月12日 対ジャングル叫女戦。
タイトル歴:ゴッデス・オブ・スターダム(第15代=パートナーは渡辺桃、第18代=パートナーは上谷沙弥、第30代=パートナーは上谷沙弥)、2018年度スターダム新人王、フューチャー・オブ・スターダム(第2代)、SWA世界(第4代)、EVEインターナショナル(第2代)、アーティスト・オブ・スターダム(第22代、パートナーは渡辺桃&AZM)、ワールド・オブ・スターダム(第13代)、マリーゴールド・ワールド(第2代)
 

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一時は4冠王者になった

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